坂戸いずみ教会・礼拝説教集

<キリストの愛とともに歩もう>イエス・キリストを愛し、自分を愛し、人を愛して、平和を生み出すことを願います。

2011年5月22日 大人と子どもノ礼拝「救いのしるし」

聖書 創世記4章1〜16節
説教者 山岡創牧師


◆カインとアベル
4:1 さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。
4:2 彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
4:3 時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。
4:4 アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、
4:5 カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。
4:6 主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。
4:7 もしお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」
4:8 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。
4:9 主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」
4:10 主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。
4:11 今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。
4:12 土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」
4:13 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。
4:14 今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」
4:15 主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。
4:16 カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。


             「救いのしるし」
 5月の子どもチャペルでは、旧約聖書・創世記の御言葉を聞き続けてきました。神さまは、ご自分の愛の形にかたどって人間を造りました。その最初の人間がアダムとエヴァでしたね。でも、二人は罪を犯して心の中の愛の形を壊してしまいました。
さて、この二人から子どもが生まれました。カインとアベルです。二人はやがて成長し、お兄さんのカインは「土を耕す者」、つまり農業をする人になりました。一方、弟のアベルは「羊を飼う者」、羊飼いになりました。


 しばらくして、二人は神さまに「献げ物」をささげて礼拝しました。カインは畑で取れた最初の作物を、アベルは最初に生まれた子羊の中でいちばん太った物を献げて礼拝しました。どんなお仕事でも、働いて得たものは神さまがその働きを祝福して与えてくださった贈り物、だから神さまに感謝して、最初に、いちばん良いものをお返しする。それが、献げる心です。
 カインとアベルも献げ物をささげて神さまを礼拝しました。けれども、ここで問題発生。神さまはアベルの献げ物は喜んで受け取ってくださったのだけれど、カインの献げ物は喜んでくれませんでした。受け取ってくれませんでした。
 もし皆がカインだったら、どう思うだろう? 悲しくて、悔しくて、腹が立つのではないでしょうか。例えば、お母さんの誕生日にプレゼントしたのに、他の兄弟のものは喜んでくれたけど、自分のプレゼントは喜んでくれなかったら‥‥、学校の先生に何かを提出した時、もう一人の友だちはほめられたけど、自分はほめられなかったら‥‥、やっぱり悲しかったり、悔しかったり、腹が立ったりするでしょう。私たちは、“自分を認めてほしい”という気持をいつも持っているからです。
 カインはこの時、「激しく怒って顔を伏せた」(5節)といいます。なんでぼくの献げ物を受け取ってくれないんだ! そう思ってものすごく腹を立てたんだね。そして顔を伏せた。顔を伏せたということは、神さまの方を見ない。神さまの顔なんて見たくない。もういいよ、フン!と神さまから顔を背けたということです。
 どうして神さまは、アベルの献げ物を受け取り、カインの献げ物は喜んで受け取ってくれなかったのでしょう? 聖書には、はっきりした理由は何も書かれていません。分からないのです。
 でも、神さまが意地悪をしたり、差別をしたりするはずはありません。きっと何か理由がある、意味があるのだと思うのです。
 神さまはカインに、「もしお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないのなら罪は戸口で待ち伏せている」(7節)と語りかけました。カインには、何か正しくないところがあったのかも知れません。例えば、本当に心を込めた良い献げ物を持って来なかったのかも知れませんし、あるいはアベルよりも立派なものを献げてほめられようという競争心があったのかも知れません。そして、神さまはカインの心を知っていて、献げ物を受け取らなかったのかも知れません。そうしたのは、カインに自分の心に気づいて、悔い改めてほしかったからでしょう。神さまは罰したいのではなく、カインにも、そして私たちにも悔い改めてほしいと、いつも願っておられるのです。


 けれども、カインは神さまのそういう気持を素直に受け取ることができませんでした。自分は認められなかったと感じて、怒っているからです。
 そしてカインは、その怒りを神さまにぶつけるだけではなく、弟アベルに向けました。神さまに喜ばれ、献げ物を受け取ってもらったアベルが憎らしく、ねたましく思ったからです。
 先日、ある方が自分の家で飼っていたインコの話をしてくれました。以前に2羽のインコを飼っていて、ある時、1羽をかごから出してかわいがっていたら、それをかごの中でじっと見ていたもう1羽のインコが、後でそのインコをいじめた、というのです。ねたみですね。手乗りインコのひなにえさをあげる時など、手のひらに乗せてえさをあげているところを、他のインコに見せたらいけないそうです。やはりねたむのだそうです。動物でも、自分よりかわいがられている奴がいる!と思ったらねたむ。意地悪をする。まして人間はなおさらかも知れません。
 アベルの方が自分よりも神さまにかわいがられている。そう感じてねたみを持ったカインは弟アベルを野原で殺してしまいました。ねたみの気持って恐ろしい。そして、私は「知りません」(9節)と罪を隠そうとしました。
 けれども、神さまはカインがアベルを殺したことを知っていました。アベルの血が土の中から叫ぶ声が聞こえたからです。カインは罪のために呪われ、地上をさまよう者となってしまいました。
 カインはそのことに、とても不安を感じたようです。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。‥‥‥地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう」(13〜14節)と不安を訴えました。
 その時、神さまは、“お前の罪の責任だ。勝手にせよ”とカインを突き放したのではありません。カインを守るために、カインが撃ち殺されないように、カインに一つの「しるし」(15節)をつけてくださったのです。神がカインを守っている、というマークをつけてくださったのです。今、〈ワン・ピース〉という超人気漫画・アニメがありますが、海賊たちが魚人島という島を襲って人魚をさらわないように、白ひげという一番強い海賊が、“ここは俺の島だ。手を出すな”と白ひげのマークのついた看板を置いて、守っているようなものですね。
 神さまはきっと、私たちにも「しるし」をつけてくださっています。目には見えないしるしだけれど、“あなたはわたしの愛する子、あなたを守る”というしるしを、一人一人の心につけてくださっています。イエスさまが私たちの罪のために犠牲になってくださった十字架。その十字架によってつけられた神さまの“愛のしるし”です。この愛のしるしが自分の心にもついていると信じて、はっきりと認めることが、洗礼を受けるということだと思います。


 ところで、こどもさんびかに、次のような歌詞のさんびかがあります。
  1 兄弟げんかをしない日は 十日に一度か月二回
    仲良くするのは難しい
   [くりかえし]
    神さま、神さま、神さま、そのわけ教えてください。
  2 知らない同士でけんかする したしくなってもまたけんか
    なぜだかさっぱり分らない
  3 心が弱るとうらみ合い はりきりすぎるといがみ合う
    なんだか悲しくなってきた
 こどもさんびか137番(改訂15番)です。これ、自分のことみたいだと思うところがあるでしょう。
 でも、最後の4番はこういう歌詞です。
  4 そのくせある時わけもなく みんなにやさしくしたくなる
    だれかにおわびをしたくなる
 こういう気持になるのは、私たちの中に、神さまの愛の形が残っているからではないかと思います。そして、罪のために愛の形の壊れてしまった部分が、神さまの愛によって修理され、癒されているからだと思います。きっと神さまがつけてくれた愛のしるしって、私たちの壊れたハートに巻かれている“包帯”みたいなものかも知れません。
 神さまを信じられなくなったり、人を愛することができなくなったりする私たちですが、自分を愛してくださる神さまの愛を信じて、神と人を愛する者へと立ち直っていきましょう。


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