坂戸いずみ教会・礼拝説教集

<キリストの愛とともに歩もう>イエス・キリストを愛し、自分を愛し、人を愛して、平和を生み出すことを願います。

2012年2月26日 大人と子どもの礼拝説教 「寝ずの番をされる神」          

聖書 出エジプト記12章29〜42節 
説教者 山岡創牧師

◆初子の死
12:29 真夜中になって、主はエジプトの国ですべての初子を撃たれた。王座に座しているファラオの初子から牢屋につながれている捕虜の初子まで、また家畜の初子もことごとく撃たれたので、
12:30 ファラオと家臣、またすべてのエジプト人は夜中に起き上がった。死人が出なかった家は一軒もなかったので、大いなる叫びがエジプト中に起こった。
12:31 ファラオは、モーセとアロンを夜のうちに呼び出して言った。「さあ、わたしの民の中から出て行くがよい、あなたたちもイスラエルの人々も。あなたたちが願っていたように、行って、主に仕えるがよい。
12:32 羊の群れも牛の群れも、あなたたちが願っていたように、連れて行くがよい。そして、わたしをも祝福してもらいたい。」
12:33 エジプト人は、民をせきたてて、急いで国から去らせようとした。そうしないと自分たちは皆、死んでしまうと思ったのである。
12:34 民は、まだ酵母の入っていないパンの練り粉をこね鉢ごと外套に包み、肩に担いだ。
12:35 イスラエルの人々は、モーセの言葉どおりに行い、エジプト人から金銀の装飾品や衣類を求めた。
12:36 主は、この民にエジプト人の好意を得させるようにされたので、エジプト人は彼らの求めに応じた。彼らはこうして、エジプト人の物を分捕り物とした。
◆エジプトの国を去る
12:37 イスラエルの人々はラメセスからスコトに向けて出発した。一行は、妻子を別にして、壮年男子だけでおよそ六十万人であった。
12:38 そのほか、種々雑多な人々もこれに加わった。羊、牛など、家畜もおびただしい数であった。
12:39 彼らはエジプトから持ち出した練り粉で、酵母を入れないパン菓子を焼いた。練り粉には酵母が入っていなかった。彼らがエジプトから追放されたとき、ぐずぐずしていることはできなかったし、道中の食糧を用意するいとまもなかったからである。
12:40 イスラエルの人々が、エジプトに住んでいた期間は四百三十年であった。
12:41 四百三十年を経たちょうどその日に、主の部隊は全軍、エジプトの国を出発した。
12:42 その夜、主は、彼らをエジプトの国から導き出すために寝ずの番をされた。それゆえ、イスラエルの人々は代々にわたって、この夜、主のために寝ずの番をするのである。
   
       「寝ずの番をされる神」
 今日、ここへ来て、礼拝堂に入って、きっとみんな、気づいたことがあると思います。“あっ、正面の十字架に何かが掛かっている!”。そうです、これは何だと思う?‥‥茨の冠(かんむり)です。これは、〈受難節レント〉が始まったしるしです。今年は2月22日(水)から始まりました。
 受難節レントというのは、イエスさまの復活を喜び祝う日〈イースター〉の前の40日間のことです。でも、この40日間には日曜日は含まれません。それは、日曜日がイエスさまの復活を喜び祝う礼拝の日だからです。
 では、日曜日以外の40日間はどんな日なのでしょう? これはね、私たちが自分の罪を悔い改める日です。イエスさまが復活されたのは嬉しいんだけど、その前にどんな出来事があったでしょう?‥‥イエスさまが、罪人たちによって十字架に架けられて殺される、という苦しみの出来事がありました。そのとき、イエスさまは、“神の国の王様、ばんざい!”とからかわれて、金の冠ではなく、茨の冠をかぶらされていました。だからね、イエスさまの苦しみを思い出すために、こうして茨の冠を十字架に掛けるのです。
 けれども、イエスさまは十字架の上で、「父(なる神)よ、彼らをお赦(ゆる)しください」(ルカ23章34節)と祈って、自分の命を犠牲にして、罪人たちを赦してくださったのです。
 ところで、“罪人たち”とはだれでしょう? 何の罪もないイエスさまを十字架に架けた人々です。でも、それだけではありません。イエスさまを裏切り、見捨てて逃げた弟子たちも罪人です。それから、イエスさまが十字架に架けられるとき、知らんぷりをしていた人々も罪人だと思います。まだいます。ここにいる私たちも罪人です。
 “えーっ! どうして私が?”と思うかも知れません。でもね、もし私たちが2千年前にイエスさまと一緒にいたら、イエスさまを十字架に架けていたかも知れない。裏切り、見捨てたかも知れない。知らんぷりをしたかも知れません。これらの人々と同じような憎しみや妬(ねた)み、意地悪、無関心、自己中心さを私たちも持っています。だから、聖書は、すべての人が罪人だと言うのです。
 けれども、イエスさまは、私たちの罪も十字架の上で赦してくださいました。だから、受難節レントは、イエスさまの十字架の苦しみを思いながら、同時に、私たちの罪が赦されている恵みを感謝する期間でもあるのです。


 ところで話は変わりますが、2月の間、子どもチャペルでは、モーセさんのお話を聞いてきました。モーセさんが篭(かご)に入れられ、ナイル川に流されたけど、エジプトの王女様に拾われ、育てられたこと。やがて大人になって、エジプトのお城から逃げ出して、野原で羊の番をしていたとき、燃えているのに燃え尽きて無くならない柴の木の中から、“モーセ、モーセ”と呼ばれる神さまの声を聞いたこと。日本語では、物が燃えるときの音を“ボーボー”とか“メラメラ”と言うけど、モーセさんの言葉では何と言うか?‥‥“モーシュ、モーシュ”と言います。だから、柴の木がモーシュ、モーシュと燃えている音が、“モーセ、モーセ”と呼ばれているように聞こえたのかも知れません。
 このとき、モーセさんは、エジプトで奴隷(どれい)にされて働かされている仲間のヘブライ人を助けなさい、という神さまのお告げを受けたのです。
 そこでモーセさんは、エジプトに帰り、王さまと話し合いを始めました。“荒れ野に私たちヘブライ人の神さまが現れました。ヘブライ人を奴隷から解放し、神さまを礼拝させてください”“だめだ、そんなことはできない。お前たちの労働をもっと厳しくしてやる”王様は全くモーセの言うことを聞きません。そこで、モーセさんは次々に、神さまの奇跡を起こして王様に見せました。持っている杖をへびに変えたり、ナイル川の水を真っ赤にしたり、カエルやブヨやアブが大量に発生したり、人々や家畜が伝染病で死んでしまったり、嵐が起こって大きな雹(ひょう)が激しく降ったり、イナゴの大群が麦を食べ尽くしたり、またエジプトの国が真っ暗闇(くらやみ)になったりしました。でも、王さまはモーセの言うことを、モーセさんの口を通して神さまが言うことを聞こうとしませんでした。
 そこで、神さまは最後の災(わざわい)いを起こされました。今日の聖書箇所に書かれていたように、何と!エジプトにいる人も動物も、その最初の子ども(長子)が突然死んでしまうという事件が起こりました。でも、ヘブライ人の家はだいじょうぶでした。神さまからお告げがあって、その夜、家族で羊の肉を食べて、その血を家の玄関の柱に塗っておいたからです。それで、玄関に血を塗ってある家は、神さまに守られて、だいじょうぶだったのです。この時の食事が、後のイエスさまの時代にも“過越の食事”として行われ、更に2千年後の今、私たちの教会でも、パンとワインの聖餐式として祝われています。
 話を戻しますが、最初の子どもがみな死んでしまって、エジプト中がパニックになりました。王様も恐ろしくなって、このままモーセの言うことを聞かないと、自分も死んでしまうと思って、ヘブライ人を奴隷から解放し、荒れ野に去らせることにしました。そこで、ヘブライ人たちは急いでエジプトを脱出しました。男の人だけで60万人もいたって言うんだからすごいね。女の人や子どもも合わせたら、300万人も400万人もいたかも知れません。それだけの人々の大々行列、今日やっている東京マラソンよりもすごいですね。
 このモーセさんのお話は、イエスさまの救いと重ね合わされます。モーセさんが、ヘブライ人をエジプトの奴隷から救い出したように、イエスさまは、先ほどお話しした十字架の犠牲によって、すべての人を“罪の奴隷”から救い出してくださったと聖書の中で言われています。


 さて、エジプトを脱出したヘブライ人のために、
「その夜、主は、彼らをエジプトの国から導き出すために寝ずの番をされた」(42節)とあります。私は今日の聖書箇所で、この御言葉がいちばん心に残りました。
 羊飼いが野原で野宿をするとき、羊たちが狼や熊、ライオンなどに襲(おそ)われないように、眠らないで番をするように、神さまもヘブライ人を守るために、寝ないで番をされたというのです。
 この御言葉を読んで、私は、こんな話を思い出しました。一人の女の子が、重い病気にかかって、病院に入院することになりました。夜、病院のベッドで一人で寝るのが不安で、看護師さんに、“私が眠るまで、ここに一緒にいてくれる?”と頼みました。“いいわよ”と看護師さんは言ってくれました。それから、どれぐらい眠ったでしょう、女の子が目を開けてみると(どうだったでしょう?)‥‥‥そこに看護師さんがいました。女の子は嬉しくなって、安心してぐっすり眠った、という話です。
 自分のために一緒に、眠らずに一緒にいてくれる人がる。目には見えないけれど、神さまって、イエスさまって、そういう方です。


記事一覧   https://sakadoizumi.hatenablog.com/archive
日本キリスト教団 坂戸いずみ教会.H.P  http://sakadoizumi.holy.jp/