坂戸いずみ教会・礼拝説教集

<キリストの愛とともに歩もう>イエス・キリストを愛し、自分を愛し、人を愛して、平和を生み出すことを願います。

2020年10月11日 主日礼拝説教          「人に従うか、神に従うか」

聖 書 使徒言行録4章15~22節

説教者 山岡 創 牧師

4:15 そこで、二人に議場を去るように命じてから、相談して、
4:16 言った。「あの者(もの)たちをどうしたらよいだろう。彼らが行った目覚(めざ)ましいしるしは、エルサレムに住むすべての人に知れ渡(わた)っており、それを否定することはできない。
4:17 しかし、このことがこれ以上民衆(みんしゅう)の間に広まらないように、今後あの名によってだれにも話すなと脅(おど)しておこう。」
4:18 そして、二人を呼(よ)び戻(もど)し、決してイエスの名によって話したり、教えたりしないようにと命令した。
4:19 しかし、ペトロとヨハネは答えた。「神に従(したが)わないであなたがたに従うことが、神の前に正しいかどうか、考えてください。
4:20 わたしたちは、見たことや聞いたことを話さないではいられないのです。」
4:21 議員や他の者たちは、二人を更(さら)に脅してから釈放(しゃくほう)した。皆(みな)の者がこの出来事(できごと)について神を賛美(さんび)していたので、民衆を恐(おそ)れて、どう処罰(しょばつ)してよいか分(わ)からなかったからである。
4:22 このしるしによっていやしていただいた人は、四十歳を過(す)ぎていた。

 

      「人に従うか、神に従うか」
 新型コロナ・ウィルス感染の影響でお休みしていたNHK連続テレビ小説〈エール〉が始まりました。待ってました!と、再び楽しみに見始(みはじ)めた人も少なからずおられることでしょう。今は、アメリカとの太平洋戦争中のストーリーを放映しています。主人公の音楽家・古山裕一(こやま・ゆういち)は〈若鷲(わかわし)の歌〉を作り、戦地(せんち)で戦(たたか)う兵士を励(はげ)まし、その歌を聞いた若者は海軍飛行予科練習生(かいぐん・ひこう・よか・れんしゅうせい)、通称“予科練(よかれん)”に憧(あこが)れます。
 そんなある日、義理(ぎり)の妹の夫・五郎が、結婚(けっこん)の挨拶(あいさつ)に裕一を訪ねて来ました。馬具職人(ばぐしょくにん)の五郎は、自分が作った馬具のほとんどが軍に納められることに、時々胸が苦しくなると漏(も)らします。そして、裕一に向って“先生には、戦争に協力するような歌ではなく、人を幸せにする音楽を作ってほしい”と懇願(こんがん)します。“お国のために戦いたいと思うのは悪いことではない。勝つために命を落とした人に報(むく)いるためには、戦い続けるしかない”という裕一に、五郎は“戦わなければいいのです。戦いがなくなればいいのです。戦争に行く若者が増えれば、無駄(むだ)に死ぬ命が増えます”と訴(うった)えて、二人は衝突(しょうとつ)します。
 この対話(たいわ)のシーンを見ながら、二人は今、どんな空気に支配されているのだろう?何に従(したが)っているのだろう?何に突(つ)き動かされているのだろう?‥‥そう思いました。
 太平洋戦争のさ中、思想・言論は統制(とうせい)され、すべてが戦争に協力するように強制されました。もちろん教会もそうです。現人神(あらひとがみ)である天皇の支配よりもキリストの支配の方が上だ。そう言った教会は弾圧され、解散させられ、牧師は投獄(とうごく)されました。私たちの坂戸いずみ教会を生み出した川越市の初雁(はつかり)教会も、弾圧、解散させられた教会の一つです。まさに信仰(しんこう)を持つ者が、神に従うか、人に従うかを、命懸(いのちが)けで問(と)われる時代でした。
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 この問いの前に、ペトロとヨハネも立たされています。神殿で、生まれつき足の不自由な人を癒(いや)し、それがきっかけで主イエス・キリストの救(すく)いを人々に語った二人は、神殿の当局者に捕まり、最高法院議会(さいこうほういんぎかい)で尋問(じんもん)され、主イエスのことを語(かた)るなと脅されます。
 かつて同じように脅されたことが、ペトロ等、弟子たちにはありました。主イエスが捕(つか)まり、十字架に架(か)けられ、処刑された時です。おそらくペトロたちも主イエスが裁(さば)かれている最高法院議会に呼び出されたと思われます。その場で、主イエスとの関係を否定せよと脅され、そうすれば命は助けてやろうと懐柔(かいじゅう)され、ペトロ等(ら)は、知らない、関係ないと答えさせられましたのでしょう。人を恐(おそ)れ、人に屈(くっ)し、人に従(したが)ったのです。
 人を恐れ、あるいは人に好(す)かれようとおもねって、私たちは行動することがあります。人に支配され、縛(しば)られているのです。色々(いろいろ)なことを考えて、そうせずにはいられない。そうせずには自分を守(まも)れないと思うことがあります。社会で生きることは、なかなかに難(むずか)しい。自分が思うように自由に生きられないことが少なからずあります。
 けれども、そういう生き方が、人を恐れている、あるいは人に好かれようとして、自分を曲(まげ)げた生き方だということは、すぐに分かります。大きなストレスを感じるからです。不自由で、不愉快(ふゆかい)だからです。そんな自分を変えたいと思ったら、勇気(ゆうき)が必要です。
 ところが、私たちが気づかないまま、人に縛(しば)られ、従って生きていることがあります。それは、“他人”という人ではなく、“自分”という人に従っている場合です。もちろん、良い意味では自立して、主体的に生きているということであり、すべてが悪いわけではありません。けれども、神さまの御心(みこころ)を思うことなく、自分を吟味(ぎんみ)せず、反省せず、間違(まちが)った生き方をしてしまう場合はあるでしょう。しかも、ストレスがありませんから、気づきにくい。自分は正しい、神さまに従っているなんて思い込んでいたら尚更(なおさら)です。
私たちは他人に縛られ、従うことからは解放されたいのですが、でも、その一方で、他人に縛られず、自由に生きている時にこそ、“自分は神さまに従っているか?”と自分を省(かえり)みる必要があるのかも知れません。
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 話を戻しますが、人に脅され、人に従って生きていたペトロでした。ところが、今回のペトロはその時とは違います。「神に従わないであなたがたに従うことが、神の前に正しいことかどうか、考えてください」(19節)。「大胆(だいたん)な態度(たいど)」(13節)で、人を恐れず、まっすぐに答えています。なぜペトロはこのように変わったのでしょうか?それは、ペトロの内に「話さないではいられない」(20節)気持があったからです。
「わたしたちは、見たことや聞いたことを話さないではいられないのです」(20節)
 ペトロは見たのです。聞いたのです。主イエスの言葉を。行動を。そして自分に対する“愛”を。この“魂(たましい)”で味わい、リアルに体験したのです。“私は主イエスと出会った。主イエスに教えられ、導(みちび)かれ、自分の罪(つみ)を知った。私は自己中心(じこちゅうしん)で、独善的(どくぜんてき)で、しかも主イエスを見捨てた裏切(うらぎ)り者だ。でも、そんな自分でさえも主イエスは赦し、愛し、リスタートさせてくださった。主イエスこそ、私の救(すく)いだ。”
自分に注がれる主イエスの愛を見た。聞いた。そのインパクトはあまりにも大きい。もしも、その魂の衝撃(しょうげき)を言葉に表(あらわ)すとしたら、トマスが告白したあの言葉しかありません。「わたしの主、わたしの神よ」(ヨハネ20章28節)。だから、見たことや聞いたことを話さずにはいられないのです。
 神に従うとは、強制され、脅されて、嫌々(いやいや)ながら従うことではありません。神さまに愛されて、赦されて、認められて、生かされて、その驚きの衝撃があまりに強く、その喜びのインパクトがあまりにも大きくて、自ら従わないではいられない。話さないではいられない。そのように神の“愛”に突(つ)き動かされて生きることにほかなりません。
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 魂に衝撃を受けたら、つまり何らかの意味で大きく感動したら、私たちは話さないではいられなくなります。俗(ぞく)な話で申し訳ありませんが、我が家の子どもはアイドルが大好きです。ある意味で衝撃を受け、感動していると言ってよいでしょう。話さないではいられない。娘の一人が二人の友人に、自分の好きなアイドルの話を熱く語(かた)ったそうです。決してその友人に、同じアイドルを好きになってもらおうと“伝道(でんどう)”したわけではありません。ところが、それを聞いた二人は、そのアイドルの歌を聞くようになって、沼にはまってしまったというのです。(その話の熱さに、我が家にもはまってしまった“大人”が一人います)
 主イエスを伝えるということは、信じさせようとしてすることではないのかも知れません。自分が衝撃を受け、感動して、大好きで、だから話さずにはいられない。その熱さが、自ずと伝(つた)わり、受け入れられていく。それは、愛の力、聖霊(せいれい)の働(はたら)きです。

 

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